石澤 眞知子 石澤 眞知子

昔の常識では建てられない。今の気候に合わせた家造

公開日:2025/09/22(月) 更新日:2025/09/20(土) 家づくりのこと

昔の常識では建てられない。“今の気候”に合わせた家づくり


四季が崩れ、二季のような気候に変わりつつある日本

かつて日本には、「春・夏・秋・冬」がはっきりとありました。
春と秋は気候が穏やかで、家を建てるにも暮らすにも“中間期”として快適な時間が存在していました。

しかし近年、その春と秋が年々短くなり、代わりに**“猛暑の夏”と“厳冬の冬”が長く続く二季型の気候**が目立ち始めています。

  • 5月から30℃超えの真夏日が出現

  • 10月下旬でも熱中症対策が必要

  • 急な寒波によるヒートショックリスク

  • 集中豪雨や台風の激甚化 など

これは、過去の気候条件を前提とした家づくりの常識が通用しなくなってきているということでもあります。


昔の家づくりでは対応できない理由

たとえば、昔ながらの日本家屋は「夏を旨とする」といわれる通り、風通しを重視し、冬の寒さにはあまり配慮されていませんでした。

また、昭和〜平成初期までの住宅でも、次のような考え方が一般的でした。

  • 断熱材は薄く、隙間風が当たり前

  • 窓はアルミサッシ+単板ガラス

  • 庇や軒で日差しを避ける設計はあっても、遮熱までは考慮されていない

  • 換気は自然にまかせ、空調設備は補助的な位置づけ

こうした家は、現代の極端な暑さ・寒さ・湿気・紫外線・暴風雨には対応しきれません。
その結果、エアコンの効きが悪く、室内環境が不安定で、健康被害や光熱費の増大を招いてしまうケースが増えています。


今の気候に合わせた「5つの家づくりの視点」

では、今の気候とこれからの暮らしに合った家とは、どのようなものでしょうか?
ここでは、私たちが提案する「これからの家づくり」に欠かせない5つの視点を紹介します。


高断熱・高気密は“もはや標準”

猛暑と厳冬の中で、快適に暮らすには**「外気の影響をいかに遮断できるか」**がポイントです。

  • 夏:外からの熱を入れず、内部の冷気を逃さない

  • 冬:室内の熱を逃さず、底冷えしない空間にする

そのためには、断熱材の性能・厚みだけでなく、**サッシや窓の断熱性能(樹脂窓・トリプルガラスなど)**も重要です。
また、**C値(気密性能)**を測定し、家全体の“すき間の少なさ”を数値で確認することも現代では当たり前になっています。


日射遮蔽と通風は「設計の基本」

昔は庇や縁側で夏の日差しを和らげていましたが、現代の強烈な日差しと室温上昇にはそれだけでは不十分です。

  • 外付けブラインドやアウターシェードで**“外で”日射を遮る**

  • 南面の窓には深い庇や落葉樹で**“夏は遮り冬は取り込む”**設計を

  • 吹き抜けや高窓を利用した通風経路の計画

特にパッシブ設計(自然の力を活かす設計)を取り入れることで、機械設備に頼りすぎない、“自律的に涼しい・暖かい”家が実現します。


結露・湿気・空気の質にも向き合う

梅雨や夏の湿度、冬の乾燥、換気不足による空気のよどみ。
これらは目に見えづらく、体調や家の寿命に直結する要素です。

  • 第1種熱交換型換気システムで室温・湿度を安定化

  • 調湿性能のある内装材(珪藻土、和紙クロス、無垢材など)

  • 隠れた壁体内結露を防ぐ防湿・透湿シートの正しい施工

特に現代では、**“冷暖房の効いた空間でも空気がきれいで呼吸しやすい”**ことが求められています。


災害への備えは「特別」ではなく「標準」

  • 突風・台風→屋根形状や開口部の設計、雨仕舞の徹底

  • 集中豪雨→排水計画、土地の高低差と浸水リスク確認

  • 停電→太陽光発電+蓄電池+非常用電源

  • 地震→耐震等級3+制震装置の導入

気候変動がもたらす災害の激甚化に備えた**「レジリエンス住宅(災害に強い家)」**の考え方もこれからの標準です。


「光熱費の安定」も設計のうち

電気代・ガス代が高騰する中、**“光熱費が抑えられる家”=“安心して暮らせる家”**でもあります。

  • 高性能な断熱+省エネ設備で使用エネルギーを減らす

  • 太陽光発電や高効率給湯器(エコキュートなど)の導入

  • ZEH基準・HEAT20 G2~G3グレードを目指す家づくり

これは単なる「節約」ではなく、家の価値を守るための投資とも言えるのです。


おわりに:家は“今”に合わせて進化するもの

家づくりの常識は、時代と共に変わります。
かつての正解が、今では通用しないことも多くなりました。

それでも私たちは、
「家族が、快適で、安全で、健康に、永く暮らせること」
この本質は、変わらないと信じています。

そのために、私たち工務店は、気候の変化にも、技術の進化にも向き合い、常に“今”の最善を提案することが使命です。

昔の常識にとらわれず、今の気候に正しく対応した“未来につながる家づくり”。
私たちと一緒に、始めてみませんか?

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