石澤 眞知子 石澤 眞知子

蓄電池は元が取れない?それでもこれからの家に必要だと思う理由

公開日:2026/08/12(水) 更新日:2026/08/10(月) 家づくりのこと

蓄電池は元が取れない?それでも私がこれからの家に必要だと思う理由

家づくりを考えているお客様と太陽光発電のお話をしていると、最近よく出てくるのが「蓄電池を付けるかどうか」という問題です。

太陽光発電については、

「電気代も高くなっているし、これからは付けた方がいいよね」

と考える方がかなり増えてきました。

自然の太陽の力を利用して、自分の家で使う電気を自分の家でつくる。

これはこれからの住宅を考えるうえで、とても理にかなっていると思います。

ところが、蓄電池の話になると少し事情が変わります。

「蓄電池まで付けた方がいいのは分かっているけれど、高いですよね」

「補助金を使っても、それほど安くならないですよね」

「結局、何年で元が取れるんですか?」

こう聞かれることがよくあります。

確かに、今の蓄電池は決して安い設備ではありません。

太陽光発電だけなら比較的採算を計算しやすいのですが、蓄電池まで含めると、電気代の削減額だけで購入費用を回収しようとしても、なかなか計算が合わないケースがあります。

だから、

「元が取れないなら、蓄電池はいらない」

という結論になる方も少なくありません。

その気持ちはよく分かります。

私自身も、住宅会社としてお客様に何でもかんでも設備を勧めればいいとは思っていません。

ただ、私は最近、蓄電池については少し違う見方をする必要があるのではないかと思うようになりました。

そもそも「元を取る」だけで考えていいのか

タテルナラの家づくり 室内からの風景

例えば、耐震等級3の家をつくること。

制震装置を付けること。

高性能な断熱材を施工すること。

こうしたものについて、

「何年で元が取れますか?」

とは、あまり考えません。

なぜなら、そこには単純なお金の損得ではない価値があるからです。

大きな地震が来た時に家族を守ってくれる。

真夏や真冬に停電しても、家の中の温度変化を小さくしてくれる。

毎日の暮らしを快適にしてくれる。

そういう「もしもの時の安心」や「暮らしの質」に対してお金を使っています。

私は蓄電池も、それに近いものではないかと思っています。

もちろん電気代を安くする効果もあります。

しかし、それだけで蓄電池の価値を判断してしまうのは、少しもったいないと思うのです。

太陽光発電だけでは、夜の電気はつくれない

太陽光発電は、とても優れた設備です。

しかし当然ながら、太陽が出ている時しか発電できません。

昼間にたくさん発電しても、使い切れなかった電気は売ることになります。

そして夜になると、今度は電力会社から電気を買います。

そこで蓄電池があると、昼間に余った電気を貯めて、夕方から夜に使うことができます。

「昼につくって、夜に使う。」

これができるだけでも、自分の家でつくった電気を自分の家で使う割合は大きくなります。

私は、これから電気代がずっと安くなっていくとは考えにくいと思っています。

世界情勢や燃料価格などによって、私たちが買う電気の価格は変わります。

だったら、

「電気を安く買う方法を考える」

だけではなく、

「できるだけ電気を買わなくても暮らせる家をつくる」
という発想も必要なのではないでしょうか。

災害時に初めて分かる蓄電池の価値

 

そして私が蓄電池に一番価値を感じるのは、やはり停電した時です。

最近の日本の夏は、本当に暑くなりました。

35℃を超える猛暑日は珍しくなくなり、地域によっては40℃に迫るような暑さになることもあります。

そんな真夏に、大きな地震や台風などによって停電が起こったらどうでしょう。

照明がつかない。

冷蔵庫が止まる。

スマートフォンの充電もできない。

⚠︎

そして何より怖いのが、エアコンが使えなくなることです。

今やエアコンは単なる快適設備ではありません。

場合によっては命を守るための設備です。

太陽光発電と蓄電池があれば、停電した時でも一定の電気を使うことができます。

もちろん蓄電池の容量や設備構成によって使える家電は違います。

それでも、冷蔵庫や照明、通信機器、そして条件が整えばエアコンを動かすための電気を確保できるという安心感は、とても大きいと思います。

高性能住宅だからこそ、蓄電池が生きてくる

タテルナラの家づくり 高性能な室内空間

ここで、私たちタテルナラが大切にしている住宅性能の話につながります。

私たちは、これからの家には高い断熱性能と気密性能が必要だと考えています。

断熱等級7のような高性能住宅は、単に「光熱費が安い家」ではありません。

外の暑さや寒さが室内に伝わりにくいため、少ないエネルギーで室温を維持できます。

ここが非常に重要です。

例えば停電時、蓄電池に10の電気が残っていたとします。

大量の電気を使わなければ室温を維持できない家と、少ない電気で室温を維持できる家。

同じ蓄電池でも、その価値はまったく違います。

高断熱・高気密住宅であれば、小さなエネルギーをより有効に使うことができます。

つまり、

高断熱・高気密は「エネルギーを使わない力」。

太陽光発電は「エネルギーをつくる力」。

蓄電池は「エネルギーを貯める力」。

この3つがそろって初めて、これからの時代に強い住宅になっていくのではないかと私は思っています。

それでも、全員に蓄電池を勧めるわけではありません

ここまで書くと、

「ではタテルナラでは、全員に蓄電池を付けるのですか?」

と思われるかもしれません。

私はそうは思っていません。

家づくりには必ず予算があります。

もし予算が限られているのであれば、まず家そのものの性能を優先すべきだと思っています。

例えば、

断熱性能を落として蓄電池を付ける。

耐震性能を落として蓄電池を付ける。

私は、そのような家づくりはおすすめしません。

設備は後から交換できます。

しかし、壁の中の断熱材や構造、気密性能などは、家が完成してから簡単に変えることはできません。

だから私なら、

家づくりの優先順位

まず耐震性能。

次に断熱・気密性能。

そして太陽光発電。

そのうえで予算が許せば、蓄電池。

このような順番で考えます。

国にも、もう少し後押ししてほしい

一方で、私自身、蓄電池について少し疑問に感じるところもあります。

国は再生可能エネルギーを増やそうとしています。

太陽光発電を普及させ、昼間に余った電気を蓄電池に貯め、必要な時間帯に使う。

これは日本全体のエネルギー政策を考えても必要なことです。

しかし現実には、蓄電池はまだ高い。

そして補助金を利用したとしても、お客様が「それなら付けよう」と簡単に決断できるほどの価格にはなっていません。

すると、

高いから買わない。

買う人が少ないから大量生産が進まない

大量生産が進まないから価格が下がりにくい。

という循環になってしまいます。

せっかく再生可能エネルギーを増やすのであれば、家庭が電気を貯める仕組みについても、もう少し国が積極的に後押ししてもいいのではないか。

住宅に携わる者として、私はそう感じています。

「何年で元が取れるか」だけではない家づくりへ

タテルナラの家づくり 夜の外観

家づくりでは、どうしても金額の話が中心になります。

当然です。

何千万円という大きなお金を使うのですから、少しでも無駄な費用を減らしたいと思うのは当たり前です。

ただ、これからの家づくりでは、

「この設備は何年で元が取れるか」

という考え方だけでは判断できないものが増えてくると思っています。

猛暑。

大型台風。

地震。

停電。

電気料金の上昇。

これから30年、40年、50年と住み続ける家を考えると、今までとは違った視点が必要です。

私は、これからの住宅に大切なのは、

できるだけエネルギーを使わず、
必要なエネルギーは自分でつくり、
そして、そのエネルギーを貯めておけること。

だと思っています。

蓄電池だけを見れば、「元が取れない設備」と言われることがあるかもしれません。

でも、家族が真夏の停電を経験した時。

大きな災害が起きた時。

電気代がさらに上がった時。

「あの時、付けておいて良かった」

と思う設備になる可能性があります。

だから私は、蓄電池についてお客様にお話しする時、単純な損得だけではなく、その家でこれから何十年暮らしていくのかまで含めて考えていただきたいと思っています。

「元を取るための蓄電池」ではなく、
「暮らしと家族を守るための蓄電池」。

そんな考え方が、これからの家づくりではもっと大切になってくるのではないでしょうか。

タテルナラでは、断熱・気密・耐震性能だけではなく、太陽光発電や蓄電池も含めて、「これからの時代に本当に強い家とは何か」をお客様と一緒に考えていきたいと思っています。