石澤 眞知子 石澤 眞知子

吉野杉、焼杉、土佐和紙など地域素材と共に暮らす

公開日:2025/11/05(水) 更新日:2025/11/04(火) 家づくりのこと

吉野杉・焼杉・土佐和紙──地域素材とともに暮らす

1. 自然とともに呼吸する家

家づくりとは、単に「住むための箱」をつくることではありません。
それは、土地の空気や気候、そしてそこに流れる時間と調和しながら暮らす「場」をつくること。
私たちタテルナラが大切にしているのは、地域に根ざした素材でつくる家です。

奈良で生まれ、奈良で暮らす人の家には、この土地の気候に合った素材が一番馴染みます。
それは決して特別なことではなく、「自然な選択」。
その代表が、吉野杉・焼杉・土佐和紙という3つの地域素材です。


2. 吉野杉──やさしさと強さを併せ持つ木

奈良県吉野の山で育った杉は、年輪が細かく、粘りと強さ、そして香り高さが特徴です。
私たちはこの「吉野杉」を、床や天井、造作家具に積極的に使っています。

無垢の杉は、冬の朝に素足で歩いても冷たく感じにくく、夏はさらりとした肌触り。
自然の調湿性があるため、家の中の湿度をやさしく整え、快適な空気を保ってくれます。
経年変化によって飴色へと深まるその姿は、**“古くなる”ではなく“育っていく”**という表現がぴったりです。

さらに、地域の森で育った木を使うことは、山を守ることにもつながります。
伐って、使って、植える。
この循環を続けることが、奈良の森の未来を守る小さな一歩だと考えています。


3. 焼杉──外壁が語る、風景との共生

外壁に使う「焼杉」は、まさに日本の知恵の結晶です。
杉板の表面を焼くことで炭化層をつくり、耐久性を高め、腐りにくく、虫にも強くなる。
さらに、化学塗料を使わずに美しい黒の外観を得られる、環境にもやさしい素材です。

焼杉の魅力は、時を重ねるほどに深まる風合い
雨や風、日差しを受けるほどに、黒が少しずつ柔らかくなり、光の当たり方で表情を変えます。
それは、住む人の暮らしとともに変化する「生きた外壁」。

タテルナラでは、耐久性と美観の両立を重視し、焼きの深さや仕上げ方にもこだわっています。
“黒い外壁”が強く主張するのではなく、庭の緑や空の色を引き立てる背景となるように設計しています。


4. 土佐和紙──光をやわらかく包む壁

壁や天井の仕上げに用いる「土佐和紙」は、手仕事の温かさを感じる素材です。
職人が一枚ずつ漉き上げる和紙は、光をやわらかく通し、部屋全体を穏やかな雰囲気に包みます。

特に南側から入る自然光が、和紙の繊維を透かして反射する様子は、何度見ても飽きません。
照明を落とした夜には、わずかな灯りが壁に優しく広がり、落ち着きのある時間をつくり出します。

また、和紙は静電気を帯びにくく、ホコリを寄せつけにくいという利点も。
見た目の美しさだけでなく、暮らしやすさという面でも優れた素材です。


5. 地域素材でつくる「地に馴染む家」

高気密・高断熱という性能を高めながらも、
私たちがいつも心に留めているのは「地域に馴染む家」であること。

吉野杉の床のぬくもり、焼杉外壁の落ち着き、土佐和紙のやわらかな光。
それぞれが主張しすぎず、互いに引き立て合うことで、
暮らしそのものが自然と調和していきます。

この土地の素材でつくるからこそ、
湿度の変化や四季の移ろいに柔らかく寄り添い、
長く、心地よく住み続けられる家が実現します。


6. これからの家づくりに大切なのは「地の記憶

技術が進歩し、どんな素材も全国から取り寄せられる今。
それでも私たちは、あえて“地のもの”を選びます。

それは、見た目のためだけではありません。
地域で育まれた素材には、その土地の気候に合う理由があり、
そして何より、そこに人と自然のつながりの記憶が刻まれているからです。

私たちタテルナラの家は、そんな「地の記憶」とともに息づいています。
吉野杉の香りに包まれ、焼杉の壁に季節の光が映り、
土佐和紙の壁に家族の影がやさしく揺れる──。

それは、時を経るほどに美しさを増す、**“暮らしと素材の共演”**です。


7. 最後

これから家を建てようと考える方へ。
もし「長く愛せる家」を望むなら、
どうか素材の選び方にも目を向けてください。

見た目だけでなく、手触り、香り、経年変化。
素材には、数字では測れない“心地よさ”があります。

タテルナラは、地域の素材とともに、
これからも“人と自然が共に呼吸する家”をつくり続けます。


 


お申し込みはこちら