家に“余白”を。小さな土間のある暮らしのすすめ
■ 「余白」のある暮らしが、心を整える
現代の住まいは、どんどん“効率的”に進化してきました。
家事動線は短く、収納は見えないようにたっぷり、無駄なスペースはなくす。
確かにそれは、便利で快適な設計のようにも思えます。
けれども、暮らしにほんの少し“余白”があることで得られる、心の豊かさも確かに存在します。
そんな余白を生む空間のひとつが、「土間(どま)」です。
靴のまま出入りできる土間は、古くから日本の住まいにあった半屋外的な空間。
時代とともにその姿を消しつつある土間ですが、
実は今の暮らしにこそ、あらためて見直されるべき価値が詰まっています。
■ 土間とはなにか?「内と外をつなぐ」やわらかな境界
土間とは、屋内でありながら土足で歩ける空間のことをいいます。
伝統的な日本家屋では、かまどのある台所や作業場が土間として設けられ、
農作業の合間に腰掛けたり、外と内の中間地点として機能していました。
現代の住宅における土間は、次のような役割を果たします。
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屋外と屋内の「クッション」になる空間
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靴や道具、汚れたものを気にせず置けるゾーン
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暮らしに“半分外”の空気を取り込む余白
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光や風、植物を近くに感じられる場
つまり、土間とは“家の中にある外”のような存在なのです。
■ 小さくてもいい。「土間のある暮らし」の具体例
タテルナラでは、大きな土間でなくても、小さな“余白”を暮らしの中に組み込む提案を大切にしています。
以下は実際によくある活用例です。
1. 玄関土間+ベンチ
靴の脱ぎ履きはもちろん、荷物の一時置きや来客とのちょっとした会話スペースに。
ベンチや造作棚を設ければ、使い勝手と心のゆとりが共存します。
2. ガーデニング土間
屋外とつながる勝手口に、小さな土間スペース。
鉢植えの植え替え、収穫した野菜の仮置き、長靴や手袋を乾かす場所として重宝します。
3. 土間リビング・薪ストーブ土間
リビングの一角に土間を設け、薪ストーブを設置。
炎を囲んで座る時間や、冬の陽だまりに寝転ぶひとときは、**“機能以上の豊かさ”**を与えてくれます。
4. 趣味・作業スペース
自転車のメンテナンスやDIY、陶芸や絵などの創作活動の場として。
“ちょっと汚れても大丈夫”な土間は、自分時間を楽しむ場所にもなります。
■ 土間がもたらす5つの効果
① 空間にリズムが生まれる
土間があると、家の中に「床の高さの違い」「素材の違い」が生まれます。
それによって、視覚的にも動線的にも“リズム”が生まれ、単調でない空間になります。
② 外とのつながりが深くなる
土間は、窓や引き戸を介して外の風景とつながります。
土間越しに庭の緑や季節の光を見ることは、室内にいながら外を感じる方法です。
③ 温熱環境が安定する
土間に用いるモルタルやタイルは、蓄熱性が高い素材です。
昼間に太陽熱を蓄え、夜間にゆるやかに放熱するため、暖房効率も高まります。
④ 家事の動線が合理的になる
買い物帰りの荷物置き、洗濯物の一時干し、アウトドア用品の整理など、
**家の中では扱いにくい作業が“土間なら気軽にできる”**という利点もあります。
⑤ 暮らしに遊び心が生まれる
「ここで珈琲でも飲もうか」「ここでちょっと一息」
そうした“気ままな場所”があると、暮らしの中に余裕や遊びが生まれます。
■ 「小さな余白」が住まいの心地よさをつくる
現代の暮らしは、とにかく忙しく、情報もモノも多すぎる時代です。
そんな中で、“あえて詰め込まない”という選択が、住まいの質を上げることもあります。
土間は、生活の機能としてだけでなく、
「余白」「ゆとり」「あそび」を感じられる空間として、住む人の心を豊かにしてくれます。
■ タテルナラの家づくりと「土間」
私たちタテルナラでは、高性能な断熱・気密を前提としたうえで、
土間という“温熱的に不利とされてきた空間”も、しっかりと工夫して取り入れます。
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玄関土間下に断熱材を敷き、底冷えを防ぐ
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土間と室内との温度差をなくす気密施工
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吉野杉や珪藻土といった自然素材との調和設計
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空調・換気の流れも設計に取り込んだ快適な土間空間
「性能」と「心地よさ」は、両立できます。
むしろ、“余白を許容できる高性能住宅”こそが、これからの理想の住まいだと私たちは考えています。
■ 「小さな土間」があるだけで、暮らしはちょっと自由になる
小さな土間がひとつあるだけで、
暮らしの流れはやわらかくなり、
季節の風景をより近くに感じ、
家の中に「ひと呼吸置ける場所」ができます。
それは、単なる間取りの工夫ではなく、
家族が日々をどう過ごし、どんな時間を大切にしたいかという価値観の表れでもあるのです。
あなたの家にも、少しだけ“余白”をつくってみませんか?
それは、想像以上に豊かな暮らしへの第一歩になるかもしれません。