収納が多ければ良いは間違い。“使える収納”の考え方
家づくりのご相談で必ず出てくるテーマのひとつに「収納」があります。
「とにかく収納はたっぷり欲しいんです!」とおっしゃる方がとても多いのですが、実は“収納量=暮らしやすさ”とは限りません。むしろ「数」だけを増やした収納は、使いにくさやデッドスペースを生み、結果的に片付かない家になってしまうことも少なくありません。
これからの住まいに本当に必要なのは、“量”ではなく“使える収納”。
その考え方を知ることで、家族の暮らしがぐっとラクに、そして快適に変わります。
「収納が多ければ片付く」という誤解
収納は家の大きさと同じで、“大きければ良い”というものではありません。例えば、押し入れの奥にしまい込んだ布団や衣類を思い出してください。数年取り出さずに眠っているものはありませんか?
奥行きの深い収納や、高すぎる棚は“存在しても使えない”ことが多いのです。
実際、現場でお客様とお話をすると「収納は多いのに、なぜか散らかってしまう」「片付けが追いつかない」という声をよく耳にします。原因は、“しまいやすさ”や“取り出しやすさ”が考えられていない収納だからです。
使える収納とは何か
では、“使える収納”とはどんな収納を指すのでしょうか。
ポイントは以下の3つです。
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使う場所の近くにある
例:ランドセルは玄関やリビングの近くに置けると便利。子どもが帰宅してすぐ片付けられます。 -
出し入れがしやすい
引き出しや可動棚を活用し、奥に押し込まなくても全体が見渡せるように。モノが埋もれず無駄がなくなります。 -
暮らしのリズムに沿っている
家事動線に沿ったパントリー、洗濯から収納までワンストップで完結するランドリールームなど、“流れ”を意識した収納は圧倒的に効率的です。
これらを計画的に取り入れることで、収納が“生きて”機能します。
子育て世代にこそ必要な収納計画
30代40代の子育て世代にとって、収納の悩みは特に深刻です。おもちゃや学用品、衣類、スポーツ用品などモノが一気に増える時期だからです。
例えば、
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リビングに小さなクローゼットを設けておもちゃや絵本を片付けられるようにする。
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ファミリークローゼットを設けて、家族全員の衣類をまとめて管理できるようにする。
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土間収納にベビーカーやアウトドア用品を収めて、室内に持ち込まない。
このように“家族の暮らし方に合わせた収納”は、日々のストレスを軽減してくれます。特に子育て世代は、片付けのしやすさがそのまま暮らしのゆとりに直結します。
見落としがちな「収納の落とし穴」
収納を考えるときに、つい見落とされがちな点もあります。
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動線を妨げる収納
せっかく大容量の収納をつくっても、通路に扉が干渉して使いづらいと意味がありません。 -
湿気や換気を考えていない収納
高気密・高断熱住宅でも、収納内の空気がこもるとカビやにおいの原因になります。換気や湿度管理を意識した設計が必要です。 -
ただの“飾り”になってしまう収納
使う予定がないのに見栄えで設けた収納は、結局空きスペースか物置になってしまいます。
こうした失敗を避けるには、“しまうモノと使う場所”を最初から明確にしておくことが大切です。
実際の現場での工夫
私たちが手がけている奈良の住宅では、プランニングの段階で「どこに・何を・誰が」しまうのかを丁寧にヒアリングします。
例えば、
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キッチン横のパントリーには、食品だけでなく日用品のストックや家電も収められるように可動棚を設ける。
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玄関収納にはコート掛けとカバン置き場をくみ合わせ、外出前後の動作をスムーズに。
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洗面所の収納は、タオル・下着・洗剤をまとめて置けるようにして、洗濯から収納までワンルームで完結。
「ただ広い」ではなく「家族の動きに合っている」収納が、暮らしを驚くほど快適にしてくれます。
収納は“未来の暮らし”を映す鏡
収納計画は、単なる片付け場所の確保ではありません。
それは家族の暮らし方そのものを映す鏡です。
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モノを探す時間が減れば、家族との時間が増える。
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家事が効率化すれば、心にゆとりが生まれる。
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すっきり片付いた空間は、快適で健康的な暮らしを支える。
収納は目立たない存在ですが、暮らしの質を大きく左右します。だからこそ、“多ければ安心”という考え方から一歩進んで、“使える収納”を計画的につくることが必要なのです。
まとめ
収納は多ければ良いというものではありません。
むしろ「量」を優先すると使いにくい家になってしまいます。
大切なのは、“しまうモノに合わせて”“使う場所に近く”“家事や生活の動線に沿った”収納を考えること。
特に子育て世代の家づくりでは、日々の暮らしのストレスを減らすために、収納を“使える形”に整えることが欠かせません。
奈良で高気密・高断熱の家を建てるとき、性能と同じくらい大切にしていただきたいのが、この収納計画です。見えない部分にこそ、暮らしを豊かにする力が潜んでいます。