美しく暮らすための収納設計。“隠す”と“見せる”のバランス
家の印象は、暮らす人の「整え方」で変わります。
どんなにデザインが美しく、素材が上質でも、日々の暮らしの中でモノがあふれてしまえば、その魅力は半減してしまいます。
だからこそ家づくりでは、「収納」は単なる“モノを入れる場所”ではなく、“暮らしを美しく見せる仕組み”として考えることが大切です。
今回は、TATERUNARAが考える「隠す収納」と「見せる収納」のバランスについてお話しします。
■ “隠す収納”が生み出す、心地よい空間のリズム
まず、隠す収納の最大の目的は「生活感を整えること」です。
たとえばキッチンやリビングに家電や日用品が常に見えていると、無意識のうちに視線が散り、空間が落ち着かなくなります。
そこで役立つのが、壁一面の造作収納や、扉付きのパントリー、ファミリークローゼットなどの“隠す仕組み”です。
見た目のノイズを減らすだけでなく、家族それぞれのモノの定位置をつくることで、片づけの手間も減ります。
特に高気密・高断熱の住まいでは、空気がきれいに循環するため、空間全体の「清潔感」がより際立ちます。
だからこそ、整理の行き届いた暮らしがより美しく感じられるのです。
隠す収納のコツは、「用途別に分けること」。
家族の動線に合わせて、キッチン・洗面・玄関・リビングそれぞれに“ちょうどいい容量”を設けることで、出し入れがスムーズになります。
詰め込みすぎず、少し余裕を残すことも、快適な収納設計のポイントです。
■ “見せる収納”がつくる、暮らしの表情
一方で、すべてを隠してしまうと、どこか無機質で個性のない空間になってしまうこともあります。
「見せる収納」は、暮らしの中に“あたたかさ”や“人らしさ”を取り戻すための工夫です。
たとえば、キッチンの飾り棚にお気に入りの器を並べたり、リビングの一角に本やグリーンを置いたり。
見せる収納には、「この家で暮らす人のセンス」や「日常を楽しむ姿勢」が自然と表れます。
また、オープンシェルフやニッチなどは、照明との組み合わせで表情が変わります。
間接照明を仕込むことで、夜はギャラリーのような雰囲気に。
暮らしの中に“光の演出”を加えるだけで、収納がインテリアの一部として映えるのです。
■ “隠す”と“見せる”の黄金バランスとは?
美しい収納設計とは、「全部を隠さない」「全部を見せない」こと。
つまり、隠す7割、見せる3割くらいのバランスが理想です。
暮らしに必要な日用品やストックはしっかり隠し、家族が楽しむ趣味や大切な思い出は“見せる”ことで、空間にリズムと温度が生まれます。
たとえば—
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玄関は靴や傘を隠す一方で、花や照明で“迎える印象”を演出する
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リビングは配線やルーターを隠しつつ、家族写真やアートを“見せる”
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キッチンは家電を隠し、器や調味料の一部を“見せる”
このように、収納を「しまう場所」と「飾る場所」に分けることで、日常の中に“美しい秩序”が生まれます。
■ 空間全体で考える“収納の設計”
TATERUNARAでは、間取りを考える初期段階から収納計画を同時に設計します。
それは「収納は後づけでは整わない」から。
高気密・高断熱住宅では、壁内の断熱ラインを崩さないように計画する必要があり、収納スペースも断熱設計と一体で考えます。
たとえば北側の壁に大容量の収納を配置することで断熱層が厚くなり、温熱環境が安定するケースもあります。
逆に外壁面に収納をつくる場合は、気密・断熱の施工精度を高める工夫が必要です。
また、家の性能が高くなると、温度ムラが少ないため、季節物の収納場所を分ける必要がなくなります。
「納戸は寒いから使わない」といった不満もなく、どの空間も快適に使えるのは、高性能住宅ならではの利点です。
■ 暮らしに寄り添う“見せる工夫”
収納を「見せる」と聞くと、どうしても“飾り棚”や“おしゃれな収納”を思い浮かべますが、
本質は“使いやすく、美しく保てること”にあります。
たとえば—
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洗面スペースにタオルを美しく畳んで並べる
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調味料を統一したボトルに詰め替える
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ファミリークローゼットの上段に、かごやボックスで高さを揃える
こうした小さな積み重ねが、「整って見える空間」をつくります。
そして、それをストレスなく維持するためには、“取り出しやすさ”と“戻しやすさ”の両立が大切。
見た目だけでなく、使う人の動線や癖に合った仕組みを考えることで、自然と片づく家になります。
■ 美しい収納は、暮らしの余白を生む
整理整頓が行き届いた家には、“余白”があります。
その余白が、心のゆとりや家族の笑顔を生み出します。
子どもたちが成長してモノが増えても、空間に余裕があると気持ちにも余裕が持てます。
逆に、収納が足りずにモノがあふれると、どんなに素敵なデザインの家でも落ち着かないものです。
だからこそ、美しく暮らすための収納設計とは、「今」だけでなく「これからの暮らし」も見据えた設計であるべき。
家族構成の変化や暮らし方の変化に柔軟に対応できるよう、可変性のある収納を計画することが大切です。
■ 暮らしを整えることで、美しさは長く続く
収納は“見えないデザイン”とも言われます。
家の性能や素材と同じように、見た目だけでなく「使いやすさ」と「心地よさ」を支える存在です。
隠す収納で空間を整え、見せる収納で暮らしに彩りを添える。
このバランスこそが、長く美しく暮らすための鍵です。
タテルナラでは、収納のデザインを「性能と暮らしをつなぐ要素」として考えています。
それは、どんなに高気密・高断熱な家でも、暮らしが散らかっていては“快適”とは言えないから。
住まいの性能を生かすのは、日々の整った暮らし。
そしてその土台となるのが、よく考えられた収納設計なのです。
「隠す」と「見せる」を上手にデザインすること。
それが、美しく暮らすための第一歩です。