石澤 眞知子 石澤 眞知子

朝顔のカーテンがつくる、優しい夏の日差し

公開日:2025/09/05(金) 更新日:2025/09/04(木) 日々のこと

朝顔のカーテンがつくる、やさしい夏の陽ざし

夏の強い日差しをどう遮るか——これは、奈良で家づくりを考えるときに必ず直面するテーマです。特に近年は猛暑が当たり前となり、家の中の暑さ対策が暮らしの快適性と直結するようになりました。高気密・高断熱住宅においても、窓から入る日射をどうコントロールするかは大切な要素です。
冒頭の写真は、私の自宅のテラスの日射遮蔽をご紹介しています。

そこで昔から取り入れられてきた知恵が「朝顔のカーテン」。窓辺やアプローチにツルを伸ばした朝顔を育て、夏の間だけ“緑のカーテン”として日射をやわらげる工夫です。自然素材の家と相性も良く、家族の季節の記憶を彩る存在にもなります。


緑のカーテンがもたらす快適さ

朝顔のカーテンには、エアコンに頼らず涼しさを得られるという魅力があります。葉の一枚一枚が直射日光を遮り、さらに植物の蒸散作用で周囲の空気を冷やす効果があります。単純にカーテンを閉めるのとは違い、風を通しながら日差しをやわらげてくれるのが特徴です。

例えば南面の掃き出し窓に朝顔を植えると、真夏の直射日光を遮りながらも木漏れ日のようなやさしい光が室内に届きます。高気密・高断熱の家は断熱性能が高いため、一度室温が安定すると外気の影響を受けにくいのですが、日射の侵入量が多いと内部に熱がこもってしまいます。そこで緑のカーテンを組み合わせると、建物性能と自然の力を両立させた暮らしが実現できるのです。


奈良の夏と、窓の向き

奈良の夏は盆地特有の暑さがあります。昼間に気温が上がりやすく、夜になっても熱気がこもる日が多いのです。そのため家づくりでは、南面からの強い日射をどうコントロールするかが重要になります。

庇や軒の出で影をつくるのも有効ですが、真夏は朝から夕方まで太陽が高く、窓際に熱が集中しがちです。そこに朝顔のカーテンがあれば、まるで自然のシェードのように家を包み込みます。しかも秋が近づけば葉が落ち、冬はしっかりと太陽の光を室内に取り込むことができます。

つまり「夏は遮り、冬は取り入れる」という理想的な住まい方を、朝顔という身近な植物が実現してくれるのです。


家族で楽しむ季節の記憶

朝顔のカーテンには、性能的な役割だけでなく「季節を感じる楽しさ」という価値もあります。子どもたちが毎朝水をやり、つるが少しずつ伸びていく様子を眺める。花が咲けば「今日は何色かな」と窓辺に集まる。そんな日々の積み重ねが、暮らしの中に小さな喜びを生んでくれます。

高気密・高断熱住宅は快適性を追求した性能住宅ですが、そこに「自然とつながる工夫」を加えることで、暮らしがぐっと豊かになります。窓辺にできた小さな緑のトンネルをくぐるように風が流れるとき、数値では表せない心地よさを感じるはずです。


建築と緑の調和

私たちが家づくりで大切にしているのは、性能とデザインの両立です。断熱材や気密シート、サッシなど、数値で裏づけられた性能を確保することは当然ですが、それだけでは暮らしを楽しむ家にはなりません。

朝顔のカーテンのような工夫は、設計図には書き込めない“余白”のような存在です。けれども、その余白こそが四季の移ろいを感じさせ、家族の思い出を育みます。特に奈良の風土に根ざした自然素材の家との相性は抜群で、漆喰や木の香りと共に季節の緑が生活に寄り添います。


実際に取り入れるための工夫

では、朝顔のカーテンを実際に暮らしに取り入れるにはどうすればよいのでしょうか。

  1. 窓の位置を選ぶ
     南や西側の大きな窓に合わせて植えるのが効果的です。直射日光を防ぎつつ、風通しを確保できる位置が理想です。

  2. ネットを設置する
     市販の園芸ネットを窓の外に張り、ツルを絡ませていきます。家の外壁に直接触れないよう、適度に距離をとるのがポイントです。

  3. 水やりと成長管理
     真夏は水分をよく吸うので、朝夕の水やりが欠かせません。子どもと一緒に成長を観察する時間も楽しみになります。

  4. 秋の片づけ
     秋になれば自然に枯れていきます。ネットを外して整理し、次の夏に向けてまた準備をする。このサイクルもまた季節のリズムになります。


高性能住宅と自然の工夫の両立

最近の住宅は「高気密・高断熱」という言葉が当たり前になりました。性能を数値で語ることができるのは、家の品質を保証する上で欠かせません。しかし、本当に心地よい暮らしは、性能だけでは語り尽くせないものです。

エアコンや断熱材といった技術に加え、朝顔のカーテンのような自然の力を上手に組み合わせること。それが、これからの時代にふさわしい住まい方だと私は考えます。高性能な住宅であっても、自然との距離を縮める工夫を少し加えるだけで、住まいはぐっと生き生きとした表情を見せてくれます。


 

夏の強い日差しをやわらげる「朝顔のカーテン」。
これはただの昔ながらの工夫ではなく、高気密・高断熱住宅にこそ取り入れたい知恵です。性能と自然、数値と情緒。その両方を大切にすることで、奈良の夏を快適に、そして美しく暮らすことができます。

窓辺に揺れる朝顔の葉を通して射し込むやさしい光は、家族の心にも影を落とし、涼しさと安らぎをもたらしてくれます。家づくりは単に“建物をつくること”ではなく、“暮らしをつくること”。その中に朝顔のカーテンを加えてみてはいかがでしょうか。


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