石澤 眞知子 石澤 眞知子

国産吉野材と外材集成材の違い

公開日:2025/07/24(木) 更新日:2025/07/12(土) 家づくりのこと

本物の木と向き合う家づくり:吉野材と外材集成材の違いとは

高気密・高断熱の高性能住宅を手がける中で、見えないところにこそ“良い素材”を使いたい、というのが私たちの信念です。とくに構造材。家を支える骨組みに使う木材は、建物の寿命や強度、快適性に大きく関わってきます。

今回は「国産吉野材」と「外材集成材」の違いについて、奈良の工務店としての目線で、分かりやすくお伝えしていきます。


◆ 吉野材とは

吉野材とは、奈良県の吉野地方で育てられた杉や桧を指します。特に吉野杉は、日本三大美林の一つとされる優良木材。何百年も前から「曲がりが少なく、年輪が細かく、粘り強い材木」として高く評価されてきました。

この吉野の森では、代々受け継がれてきた「密植・間伐・長伐期」という独特の育林方法により、まっすぐで美しい木が育ちます。1本1本に人の手がかかり、時間と手間を惜しまず育てられた材。それが吉野材の本質です。


◆ 外材集成材とは

一方、集成材とは、板状に加工した木材(ラミナ)を接着剤で貼り合わせた人工的な木材です。原料には、北米やヨーロッパなど海外産のスプルースやラジアタパインなどの“外材”が多く使われます。

「規格が安定していて、曲がりや反りが少ない」「大量生産が可能でコストが抑えられる」などのメリットがあり、大手ハウスメーカーでも多く採用されています。

ただし、外材集成材には、樹種の違いや、輸送時の含水変化、接着剤の種類によって、性能や耐久性にばらつきがあることも忘れてはなりません。


◆ 違い1:素材の強さと粘り

吉野材は、天然の木そのものの粘り強さとしなやかさを備えています。特に“赤身”と呼ばれる芯材部分は、腐りにくく、シロアリにも強いという特性があります。構造材として非常に信頼できる素材です。

一方で、集成材は接着剤で何層にも重ねて強度を出す仕組みなので、製品としては非常にまっすぐで、強度も計算できます。ただし、無垢材のような“粘り”や“しなり”といった性質は持ちにくく、地震のような複雑な揺れには不利になる場面もあります。


◆ 違い2:耐久性と経年変化

吉野材は、年月を経るごとに木目が落ち着き、赤身はさらに色濃く、艶を増していきます。これは無垢材ならではの“経年美化”と呼ばれる現象。古民家に使われている柱や梁が、何十年も健在であるのは、まさにこの耐久性の証です。

一方、外材集成材は、表面が加工されており、無垢材のような風合いは出にくく、長期的には接着剤の劣化による剥離なども課題になる場合があります。


◆ 違い3:安心・安全性(化学物質)

吉野材は、自然乾燥や低温乾燥で仕上げられ、接着剤などを使わずにそのまま構造材として使えます。接着剤に含まれるホルムアルデヒドなどの化学物質の心配がなく、子どもやペットにも優しい家づくりに適しています。

外材集成材は、JAS規格などで安全性は保証されていますが、接着剤の使用は避けられず、敏感な方やアレルギー体質の方には注意が必要です。


◆ 違い4:環境への配慮

吉野材は、山を守り、森を育てる循環型の資源です。地元で育ち、地元で使う「地産地消」の考え方は、輸送エネルギーも少なく、カーボンフットプリントの削減にもつながります。私たちの未来にとっても、持続可能な選択肢といえるでしょう
 (カーボンフットプリントとは、原材料調達から廃棄に至るまでのライフサイクル全体を通して排出される温室効果ガスの量をCO2に換算して表示する仕 組み)

。一方で、外材は遠く海外から船やトラックで運ばれてくるため、環境負荷が大きくなりがちです。加えて、伐採された森林の管理状態が不明確な場合もあり、持続可能性の面では疑問が残るケースもあります。


◆ 違い5:価格と価値

外材集成材は、規格品として大量生産されているため、単価は吉野材に比べて安価です。そのため、建築コストを抑える目的で選ばれることが多いです。

しかし、価格だけを重視するのではなく、「何十年先も住み継ぐ家を建てたい」「地域に根ざした素材で安心な住まいをつくりたい」と考えるご家族には、吉野材の“価値”が見えてくるはずです。


生命を支える木を、どこから選ぶか

家は、大切な家族の命を守る「器」であり、何十年と付き合っていく存在です。構造材は、完成後は見えなくなる部分ではありますが、実は一番大切なところ。

私たちが吉野材を選ぶ理由は、「手間も時間もかかるけれど、やっぱりいい木だから」。地元奈良の木を使って建てた家が、何十年先も美しく、心地よく、家族を守り続けてくれる。その確信があるからです。

コストだけを見れば、外材集成材にも合理性はあります。でも、本物の木のぬくもり、呼吸する素材の力強さ、長寿命な家を望むなら、吉野材という選択肢が、未来の安心をつくってくれると信じています。


 高性能住宅×吉野材で、家族の未来を守る

奈良県で高気密・高断熱・高耐久な家づくりを目指すなら、素材選びはとても重要な第一歩です。国産材、とくに吉野の山で育った材木を使うことは、見えないところに“本物”を使う、という誠実な家づくりの姿勢でもあります。

私たちはこれからも、地元の山を大切にしながら、家族にとって本当に価値のある家を一棟一棟丁寧に建てていきます。


 

1ページ (全11ページ中)