福井 善行 福井 善行

「壁裏の見えない施工:断熱材・気密シート・防湿層、現場監督が語る“隠れた勝負どころ”」

公開日:2025/11/21(金) 更新日:2025/11/21(金) 家づくりのこと

壁裏の見えない施工:断熱材・気密シート・防湿層

現場監督が語る“隠れた勝負どころ”

家づくりの現場に立っていると、完成後には絶対に見えなくなる “壁の中” の仕事こそ、住まいの性能を決める本当の勝負どころだと常に感じます。
外観がきれいでも、断熱材が隙間だらけだったり、防湿層が破れていたり、気密の処理が不十分だと、家の性能は大きく落ちてしまいます。

とくに奈良県のように夏は暑く湿度が高く、冬は底冷えする地域では、壁の中の施工精度がそのまま暮らし心地に直結します。

今回は現場監督として、“見えない施工の本当の重要性” を、断熱材・気密シート・防湿層という三つの視点からお伝えします。


■「壁裏の仕事」で家の寿命が決まる

なぜ、壁の中の施工がそこまで重要なのか。
理由はシンプルで、一度閉じてしまうと二度と手を入れられない場所だからです。

壁の中で起きる失敗は、年数が経って初めて表面化します。
・カビ
・壁内結露
・断熱性能の低下
・木材の劣化
こういった症状は、新築時には見えません。しかし、暮らして数年〜十数年経つと確実に結果が出ます。

「冬に妙に寒い」「エアコンが効きにくい」「押入れが湿っぽい」
こうした悩みの多くは、壁の中の施工不良が原因で起こります。

だからこそ、私たち現場監督にとって、壁を塞ぐ前の工程は“最大の緊張ポイント”と言えるのです。


■断熱材――“隙間ゼロ”の精度が快適性を決める

断熱材は、家の温度を守る最前線。
しかし、断熱材がどれだけ良い製品でも、施工の精度が悪ければ性能は一気に半減します。

●隙間が1 cmあれば、そこから冷気は容赦なく侵入する

断熱材と柱の取り合い、配線周り、開口部近く……
断熱材を隙間なく、均一に、正しく充填するには繊細な調整が必要です。

少し大げさに聞こえるかもしれませんが、断熱材は“ふわっと置く”だけでは意味がないんです。
圧縮しすぎてもダメ、足りなくてもダメ。素材の特性を理解し、壁内で正しく機能するように丁寧に入れていく必要があります。

特に奈良県の気候は厳しく、夏の湿気と冬の冷えが入り混じる地域。
断熱材の施工精度が悪いと、住まい手は確実に不快を感じます。

現場では、断熱材の端部を一つひとつチェックし、隙間があれば必ず追加で補修。
この作業をどれだけ丁寧にやれるかが、家の性能を大きく左右します。


■気密シート――家の“外皮性能”をつくる要

断熱材と同じくらい重要なのが気密シート。
これは、いわば**家全体を包み込む“皮膚”**のような存在です。

●C値(気密性能)は家の呼吸の質を左右する

高気密の家は、計画換気がしっかり機能します。
室内の空気をコントロールするには、隙間をなくすことが必須。
隙間が多い家だと、換気システムが与えた通りに空気が動きません。

そのため気密施工は、単にテープを貼ればいいという作業ではなく、
・シートの重ね幅が適切か
・配線・配管周りの処理が丁寧か
・切り欠きが最小限で納められているか
など、細部の積み重ねが求められる高度な作業です。

気密測定の日は、現場監督にとって「テストの日」。
施工の出来が数字として現れるので、毎回緊張します。
しかし、職人さんと連携して丁寧に仕上げると、本当にしっかりとした数字が出ます。


■防湿層――“壁内結露”を防ぐ見えないガードマン

断熱材の性能を長持ちさせ、木材の腐朽を防ぐのに欠かせないのが防湿層です。
防湿層は空気中の湿気が壁の中に入り込むのを防ぎ、結露を未然に防ぐ役割を担っています。

●壁内結露は静かに家をむしばんでいく

結露と聞くと、窓ガラスにつく水滴を連想する方が多いですが、本当に怖いのは 壁の中で起きる結露 です。

壁内結露は、
・断熱性能の低下
・カビ
・木材の腐朽
など、住まいの寿命に直結する深刻な問題を引き起こします。

防湿層を適切に現場で正しく施工することで、壁内結露のリスクを大幅に減らすことができます。


■“見えない部分”こそ、家の価値を大きく左右する

家が完成してから見えるのは、壁紙や床、照明やキッチンなど、華やかな部分ばかり。
しかし、本当に大切なのは、そのずっと奥で支えてくれている“壁裏の施工”です。

丁寧な断熱
正確な気密
適切な防湿

これらの積み重ねが揃ってこそ、真の高性能住宅になります。

完成後に見ることはできませんが、家の中の快適さ・省エネ性・耐久性に直結する、最も重要な工程だと胸を張って言えます。


■現場監督が伝えたいこと

私は日々、職人さんとコミュニケーションを取りながら、見えないところをどれだけ丁寧に施工できるかを常に意識しています。
お客様には「こんなところまで気をつけているの?」と驚かれることもあります。

しかし、これが “長く快適に住める家” と “数年で性能が落ちる家” の分かれ道です。

壁を塞ぐ前のわずかな時間に、どれだけ手間をかけられるか。
それが現場監督としての腕の見せどころであり、TATERUNARAの家づくりの真価だと思っています。


■まとめ

・断熱材の隙間処理
・気密シートの精度
・防湿層による結露対策

これらは、家づくりの中でも “見えないが最重要” なポイントです。

もし家づくりを検討されている方がいれば、ぜひこの「壁裏の施工」に注目してみてください。
完成後は見えない場所ですが、そこにどれだけ誠実さと技術が詰まっているかで、暮らしの質は大きく変わります。

私たち現場監督は、これからも住む人の毎日の快適さを支えるために、見えない場所ほど丁寧に、誠実に仕上げていきます。


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